シンナーの甘酸っぱい香り

目の前のマンションの手すりがいつのまにかキレイになって、
色が変わっていた。塗装し直したようだ。

学生時代のペンキ塗りのバイトを思い出した。

母の実家が塗装業を営んでいて、学生の頃よくバイトさせて
もらっていたのだ。

ペンキとシンナーの匂いでちょっとフシギな気分になってた
あの頃がなつかしい。

ペンキ塗りは簡単なようでなかなかコツがいる。

一番難しいのは薄い色。
ムラなくハケの流れを乱すことなく仕上げるのが難しい。

塗る場所として難しいのは、平坦なところ。
平坦なところは一番目立つ部分で、ごまかしが利かない。
手すりとか、デコボコしたところの方がかえってごまかしが
きくので簡単だったりする。

しかしまぁ、一旦慣れてしまうとホントに単純作業。
一心不乱に塗りたくる。なんかもう頭をからっぽにできる。
色々考えたり悩み事があったりしたときなんか、いい気分
転換になったりしてた。

一緒に仕事させてもらった職人さん達もおもしろかった。

元暴走族で、昔工藤静○と付き合ってたと言い張る人。
詐欺で刑務所に入ってたことがある人。漢字がかけない人。
給料の全てをパチンコと競馬にかけていた人。

本当に色んな人がいて勉強になった。
学生時代ってのは、本当にその気になればリスクなしで色々
なことが経験できた。

そのことの有難さ、重要さが分かってなかった当時の自分が

恨めしい。

とは、あまり思わない。
というか、思わないようになってきた。

何の気なしに過ごしてきた、そんな恵まれた時代があってこそ、
今の私があるはずだから。

今過ごしている日常を、数年・数十年後の自分がどう思うか、
ってことを考えられるようになってきたってことだと

思うから。